- 2025年8月14日
腰痛に対する運動(リハビリ)
*この記事は保存療法の方が対象になります。手術をされた方は、こちら(順次公開予定)をご覧ください。
目次
- 腰痛とは
- 主な原因
- 運動(リハビリ)
- 日常生活の注意点
- さいごに
1.腰痛とは
腰痛とは、特定の病気の名前ではなく、腰部を主とする痛みや張りを指す“症状”を指します。
厚生労働省の調査でも、最も有訴者率の高い自覚症状であることが報告されており、現代社会の多くの人が悩まされています。

腰痛は、症状の続く期間によって以下の3つに分けられます。
- 急性腰痛:発症から4週間未満の腰痛。多くは自然に軽快しやすい。
- 亜急性腰痛:発症から4週間以上3ヶ月未満。
- 慢性腰痛:発症から3ヶ月以上続く腰痛。急性腰痛と比べて改善しづらい。
原因は様々で、背骨やその周りの筋肉、椎間板などが原因となる「脊椎由来」、神経が原因となる「神経由来」、まれに「内臓由来」、「血管由来」のこともあります。
また、ストレスなどの「心因性」が関連することもあります。以前は、腰痛の約85%は原因不明と言われることもありましたが、近年の研究では、原因を特定できる腰痛も多いことがわかってきています。中には注意が必要な危険な腰痛(レッドフラッグサイン*)が隠れている場合があります。
*レッドフラッグサイン
- 発症年齢が<20歳または>55歳
- 時間や活動性に関係がない腰痛
- 胸部痛
- 癌、ステロイド治療、HIV感染の既往
- 栄養不良
- 体重減少
- 広範囲に及ぶ神経症状
- 構築性脊柱変形
- 発熱
2.主な原因
腰痛診療ガイドライン2019では、主な原因として以下のことが挙げられています。
- 椎間板性腰痛:背骨のクッションの役割をする椎間板の変性など
- 椎間関節性腰痛:背骨の後ろにある椎間関節の炎症や変形など
- 筋・筋膜性腰痛:腰周りの筋肉や筋膜の過度な緊張や損傷など
- 腰部脊柱管狭窄症:神経の通り道である脊柱管が狭くなる(詳細はこちら)
- 腰椎椎間板ヘルニア:椎間板の一部が飛び出し神経を圧迫する
- 仙腸関節性腰痛:骨盤にある仙腸関節の機能障害など
3.運動(リハビリ)
残念ながら、急性腰痛の場合、運動することで腰痛がより改善するとは言えません。痛みがあり不安になるかもしれませんが、普段通りの生活を継続することが一番と言われています。
しかし、慢性腰痛の改善には運動を行うことが推奨されています。運動は、痛みの軽減だけでなく、身体機能の改善や再発予防にも繋がります。
無理のない範囲で、まずは週2~3回を目安に始めてみましょう。
おしり(大殿筋)ストレッチ
目的
腰部脊柱管狭窄症の方は、無意識に腰をかばう姿勢をとることで、おしりの筋肉が硬くなりがちです。この硬くなった筋肉をストレッチし、柔軟性を取り戻すことが目的です。おしりの筋肉が柔らかくなること、結果として腰にかかる負担を軽減する効果が期待できます。
方法
① 仰向けになり、両膝を軽く曲げます。
② 片方の膝を両手で抱え、ゆっくりと胸に引き寄せます。反対の足は軽く曲げる、または伸ばします。
③おしりの筋肉が心地よく伸びるのを感じながら、30秒続けます。
回数・頻度:左右交互に2回ずつ。
理学療法士のワンポイント:
伸ばしている方の足の膝裏がベッドから離れないようにすると、股関節の付け根もストレッチされます。

腰背部ストレッチ
目的
長時間同じ姿勢でいることや、腰をかばう動作で硬くなりがちな腰や背中の筋肉(脊柱起立筋など)の緊張を和らげることが目的です。筋肉の柔軟性を取り戻すことで、血行を促進し、痛みの軽減につなげます。
方法
① 仰向けになります。
② 両膝をゆっくりと胸の方へ引き寄せ、両手で抱えます。
③心地よい伸びを感じるところで、20秒キープします。この時、ゆっくりと呼吸をしましょう。
回数・頻度:2回。2セット。
理学療法士のワンポイント:
反動を着けずに、じっくり伸ばすことが重要です。

ドローイン(腹式呼吸)
目的
「天然のコルセット」とも呼ばれるお腹の深層筋(腹横筋)を意識的に使えるようにすることが目的です。この筋肉を活性化させることで、体幹が安定し、腰椎(腰の骨)への負担を軽減します。正しい腹式呼吸を習得することで、日常生活の中でも自然と体幹を支えられるようになります。
方法
①仰向けになり、両膝を曲げます。
②鼻から息を吸ってお腹を膨らせます。
③口からゆっくりと息を吐きながら、おへそを背中に近づけるように下腹部をゆっくりへこませます。
*腰が反ったり、ベッドに強く押し付けないように注意しましょう。
回数・頻度:1回2分。2セット。
理学療法士のワンポイント:
両手をお腹の上に置き、呼吸に合わせて両手が上下するのを感じましょう。

ヒップリフト
目的
お尻(大殿筋)と太ももの裏(ハムストリングス)の筋肉を強化することが目的です。これらの筋肉は、体を支えたり、歩いたりする際に非常に重要です。お尻の筋肉をしっかり使えるようになると、腰への負担が減り、動作が安定します。
方法
① 仰向けになり両膝を立て、足裏を床につけます。
② おなかに力を入れたまま、1秒かけておしりと背中を持ち上げます。
③ 2秒かけてゆっくり下ろします。10回繰り返します。
回数・頻度:10回を1セットとし、2セット。
理学療法士のワンポイント:
腰が反らないように注意しましょう。おなかに力を入れるのと同時におしりの穴を締めるようにしましょう。

四つ這い足上げ
目的
体幹を安定させたまま手足を動かす能力を高めることが目的です。背中をまっすぐに保ちながら足を上げることで、お尻の筋肉と、体を支える背中からお腹周りの筋肉(体幹)を同時に鍛え、バランス能力を養います。これにより、動作時の腰のぐらつきを防ぎ、再発予防につなげます。
方法
① 四つ這いになって、背中をまっすぐに保ちます。
② 腰が反らないように、片脚をあげます。
③足を下ろし、反対の足をあげます。
回数・頻度:10回を1セットとし、2セット。
理学療法士のワンポイント:
はじめは、足を高くあげなくても良いので、腰が反らないように注意しましょう。

ウォーキング
目的
全身の体力や心肺機能を維持・向上させることが目的です。ウォーキングは、腰への負担が少ない有酸素運動であり、全身の血行を促進することで痛みを和らげる効果もあります。また、気分転換やストレス解消効果も期待でき、慢性的な痛みによる精神的な負担の軽減にも繋がります。
方法
1日30分程度のウォーキングを行いましょう。
世界保健機関(WHO)による目安は、以下の通りです。(一部抜粋)
一般的な成人 18~64歳の場合
週に150~300分の中強度の有酸素運動、もしくは75~150分の高強度の有酸素運動、またはその組み合わせで同等の時間・強度となる身体活動を実施する。
高齢者 65歳以上の場合
週に150~300分の中強度の有酸素運動、もしくは75分~150分の高強度の有酸素運動、もしくはその組み合わせで同等の時間・強度となる身体活動を実施する。

運動の種類や負荷量は、個別に調整することが理想的です。当院では外来リハビリを実施していますので、通院でのリハビリをご希望の方は当院までお問い合わせください(リハビリ実施には医師の診察が必要になります)。
*運動により症状が増悪する場合は、運動を中止して受診することをお勧めします。
4.日常生活の注意点
生活習慣を見直しましょう
腰痛の予防には健康的な生活習慣と穏やかでストレスが少ない生活が推奨されています。例えば、喫煙(タバコ)や飲酒は腰痛発症のリスクを高めると言われています。また、肥満も腰痛発症のリスクを高めるという報告もあるため、健康的な体重(BMI:18.5〜25.0)の管理が大切です。
痛いから安静にするのではなく、無理のない範囲で運動しましょう
過度な安静はかえって回復を遅らせることがあります。無理のない範囲で「3. 運動(リハビリ)」をやりましょう。
物を持つときの姿勢に気をつけましょう
腰だけで持ち上げようとすると、ぎっくり腰の原因になることがあります。物を持つときは、膝を曲げ腰を落として持つようにしましょう。また、できるだけ身体を物に近づけましょう。

5.さいごに
腰痛は多くの方が経験しますが、その原因や適切な対処法は一人ひとり異なります。時間が経てば治るものから、専門的な治療が必要なものまで様々です。メリット、デメリットをお伝えし、患者様に合った治療を一緒に決めていきます。腰痛でお困りの方は、一度当院にご相談ください。
執筆:理学療法士 桐山魁生
監修:理事長 森俊一