- 2025年10月2日
腰椎椎間板ヘルニアに対する運動(リハビリ)
*この記事は保存療法の方が対象になります。手術をされた方は、こちら(順次公開予定)をご覧ください。
腰椎椎間板ヘルニアに関する検査・治療・手術についてはこちらをご覧ください。
目次
- 腰椎椎間板ヘルニアとは
- 主な症状
- 運動(リハビリ)
- 日常生活の注意点
- さいごに
1.腰椎椎間板ヘルニアとは
腰椎椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板(クッションのようなもの)が、脊柱管内に飛び出して神経を圧迫し、腰痛や痺れなどが出現する疾患です。坐骨神経痛の最も一般的な原因とも言われています。

腰椎椎間板ヘルニアが発生しやすい要因
腰椎椎間板ヘルニアの発生には、日常生活・労働環境(医療従事者、職業による全身振動の暴露、時間の余裕がない労働環境)、力学的要素、喫煙、遺伝的な要素なの要因が関与すると言われています。
腰椎椎間板ヘルニアの自然経過
腰椎椎間板ヘルニアは自然に治ると耳にしたことがあると思います。最近の研究やガイドラインでも、腰椎椎間板ヘルニア症例の3分の2で椎間板の自然吸収が期待できると言われています。

しかし、病態によって自然吸収が期待できないものがあります。
こういった病態では、早期に手術をする方が回復が早まり、長期的な予後が良いと言われています。症状がある方は、治療方針を専門医と相談することをお勧めします。
2.主な症状
主な症状として以下の5つが挙げられます。
- 腰痛と片側のおしりから足にかけた痛みやしびれ
- 立っているよりも座っている姿勢の方が症状が強い
- 前かがみで痛みが強くなる
- 運動や労働によって痛みが強くなる
- 咳、くしゃみによる痛みが強くなる
3.運動(リハビリ)
運動は痛みの軽減だけでなく、身体機能の改善にも繋がります。
専門医を受診した上で、無理のない範囲で運動をしましょう。
発症1週目
この時期は、ヘルニアが神経を圧迫することで起こる痛みや炎症による痛みが出現します。無理に動く必要はなく、炎症が長引かないように腰へのストレスを避けた生活をすることが大切です。コルセットを使い、痛みの出ない動作や姿勢を見つけると良いでしょう。
おしり(大殿筋)ストレッチ
目的
股関節が硬いと、腰への負担が高まります。おしりの筋肉が柔らかくなること、結果として腰にかかる負担を軽減する効果が期待できます。
方法
① 仰向けになります。
② 片方の膝を両手で抱え、ゆっくりと胸に引き寄せます。反対の足は軽く曲げる、または伸ばします。
③ おしりの筋肉が心地よく伸びるのを感じながら、30秒続けます。
回数・頻度:左右交互に2回ずつ。

ドローイン(腹式呼吸)
目的
「天然のコルセット」とも呼ばれるお腹の深層筋(腹横筋)を意識的に使えるようにすることが目的です。この筋肉を活性化させることで、体幹が安定し、腰椎(腰の骨)への負担を軽減します。正しい腹式呼吸を習得することで、日常生活の中でも自然と体幹を支えられるようになります。
方法
① 仰向けになり、両膝を曲げます。
② 鼻から息を吸ってお腹を膨らせます。
③ 口からゆっくりと息を吐きながら、おへそを背中に近づけるように下腹部をゆっくりへこませます。
*腰が反ったり、ベッドに強く押し付けないように注意しましょう。
回数・頻度:2分続けたら休憩。2セット。
理学療法士のワンポイント:
両手をお腹の上に置き、呼吸に合わせて両手が上下するのを感じましょう。

発症2週目
ヒップリフト
目的
おしり(大殿筋)の筋肉を強化することが目的です。これらの筋肉は、体を支えたり、歩いたりする際に非常に重要です。お尻の筋肉をしっかり使えるようになると、腰への負担が減り、動作が安定します。
方法
① 仰向けになり両膝を立て、足裏を床につけます。
② おなかに力を入れたまま、1秒かけておしりと背中を持ち上げます。
③ 2秒かけてゆっくり下ろします。10回繰り返します。
回数・頻度:10回を1セットとし、2セット。
理学療法士のワンポイント:
腰が反らないように注意しましょう。おなかに力を入れるのと同時におしりの穴を締めるようにしましょう。

発症3週目
四つ這い足上げ
目的
体幹を安定させたまま手足を動かす能力を高めることが目的です。背中をまっすぐに保ちながら足を上げることで、お尻の筋肉と、体を支える背中からお腹周りの筋肉(体幹)を同時に鍛え、バランス能力を養います。これにより、動作時の腰のぐらつきを防ぎ、再発予防につなげます。
方法
① 四つ這いになって、背中をまっすぐに保ちます。
② 腰が反らないように、片足を上げます。
③ 足を下ろし、反対の足を上げます。
回数・頻度:10回を1セットとし、2セット。
理学療法士のワンポイント:
はじめは、足を高く上げなくても良いので、腰が反らないように注意しましょう。

ウォーキング(痛みが軽減したら)
目的
全身の体力や心肺機能を維持・向上させることが目的です。ウォーキングは、腰への負担が少ない有酸素運動であり、全身の血行を促進することで痛みを和らげる効果もあります。また、気分転換やストレス解消効果も期待でき、慢性的な痛みによる精神的な負担の軽減にも繋がります。

方法
1日30分程度のウォーキングを行いましょう。
世界保健機関(WHO)による目安は、以下の通りです。(一部抜粋)
一般的な成人 18~64歳の場合
1週間で150~300分の中強度の有酸素運動、もしくは75~150分の高強度の有酸素運動、またはその組み合わせで同等の時間・強度となる身体活動を実施する。
高齢者 65歳以上の場合
1週間で150~300分の中強度の有酸素運動、もしくは75分~150分の高強度の有酸素運動、もしくはその組み合わせで同等の時間・強度となる身体活動を実施する。
*中等度の有酸素運動・・・散歩、ラジオ体操、ウォーキング
*高強度の有酸素運動・・・ジョギング、サイクリング、ハイキング
運動の種類や負荷量は、個別に調整することが理想的です。当院では外来リハビリを実施していますので、通院でのリハビリをご希望の方は当院までお問い合わせください(リハビリ実施には医師の診察が必要になります)。
*運動により症状が増悪する場合は、運動を中止して受診することをお勧めします。
4.日常生活の注意点
腰に良い姿勢を心がけましょう
過度に腰を反らすこと、重い物を持つことは避けましょう。また、床や低い椅子に座ることは腰に負担がかかります。高さのある椅子(目安:40cm程度)に座りましょう。

物を持つときの姿勢に気をつけましょう
物を持つときは、膝を曲げ腰を落として持つようにしましょう。
また、できるだけ身体を物に近づけましょう。

5.さいごに
保存治療(運動や薬)が良く効く方もいれば全く効かない方もいます。当院では、医師よりメリットやデメリットをお伝えし、患者様に合った治療を一緒に決めていきます。腰椎椎間板ヘルニアでお困りの方は、一度当院にご相談ください。
執筆:理学療法士 増山玲香
監修:理事長 森俊一