頚椎症性脊髄症

cervical-spondylotic-myelopathy

頚椎症性脊髄症とは

頚椎症性脊髄症は、加齢に伴う頚椎や椎間板の変性を背景として、脊柱管の中を走る脊髄そのものが圧迫されることで発症する病気です。その結果、手足のしびれや動かしにくさ、歩行障害、さらには排尿や排便の異常など、全身にわたる神経症状を引き起こします。

起こりやすい年齢・性別・部位

頚椎症性脊髄症は、中高年以降に多くみられる疾患です。

発症は50〜60歳代に多く、男女比では男性が女性のおよそ2倍とされています。

好発部位は第5頚椎と第6頚椎の間で、この高さで脊髄が圧迫されやすい傾向があります。

病態と発症の仕組み

基礎にあるのは、いわゆる変形性頚椎症です。加齢とともに頚椎や椎間板に変化が生じ、脊柱管が徐々に狭くなることで脊髄が圧迫されます。

主な要因として、椎間板が傷んで膨らむこと、骨の縁がとがって突出すること、背骨の後方にある靭帯が厚くなることが挙げられます。

これらの変化が重なることで、脊髄が前後から挟み込まれるような状態となり、神経の伝達障害が起こります。

主な症状

頚椎症性脊髄症では、脊髄という中枢神経が障害されるため、症状は首や腕だけにとどまらず、体幹や下肢にもおよびます。

上肢症状

初期には、首の痛みや動かしにくさがみられることがあります。進行すると、両手や両腕にしびれや痛みが出現し、左右両側に症状が出やすいのが特徴です。

巧緻運動障害

特に特徴的なのが、手指の細かい動作がしにくくなる状態です。ボタンを留める、箸を使う、字を書くといった動作がうまくできなくなります。

体幹・下肢症状

さらに進行すると、体幹や下肢にも症状がおよび、感覚が鈍くなったり、足が突っ張るような歩き方になったりします。階段の上り下りが困難になることもあります。

重症例でみられる排尿・排便障害

重症例では、頻尿や尿失禁、便秘などの排尿・排便障害が現れ、日常生活に大きな支障をきたします。

身体所見と神経学的検査

診察では、運動機能や反射の異常を確認します。

手を開いたり握ったりする動作を10秒間続けてもらい、その回数が少ない場合は、手指の巧緻運動障害があると判断されます。

反射の検査では、障害されている高さでは反射が低下する一方、その下のレベルでは反射が過剰に出ることがあります。下肢では膝の反射が強く出ることが多くなります。

また、脊髄の障害を示す特徴的な反射として、足の裏を刺激したときにつま先が反り返る反射や、指を弾いたときに親指が動く反射などが確認されることがあります。

画像診断

診断にはX線検査とMRI検査を組み合わせて行います。

X線検査(レントゲン)

X線検査では、脊柱管が狭くなっているかどうか、骨のとがりや椎間板のすり減り、背骨の並びの異常などを確認します。

MRI検査

MRI検査では、脊髄がどの程度圧迫されているかを直接評価することができます。脊髄が扁平化している様子や、脊髄内部に信号変化がみられる場合には、神経障害が進行している可能性があります。

治療方針

治療は症状の程度と進行具合によって決定されます。

軽症の場合には、痛み止めなどの薬物療法や装具療法などの保存療法を行うことがあります。ただし、頚椎症性脊髄症は進行性で、放置すると回復できない障害を残す可能性があるため、経過観察には注意が必要です。

症状が進行している場合や、歩行障害や排尿障害がみられる場合には、脊髄障害が不可逆的になる前に手術が検討されます。

代表的な手術方法

代表的な手術方法は、椎弓形成術と呼ばれる方法で、背骨の後方を広げて脊柱管を拡大し、脊髄への圧迫を解除します。病態によっては、前方から圧迫因子を取り除き、骨を固定する手術が選択されることもあります。

頚椎症性神経根症との違い

頚椎症性脊髄症とよく似た病気に、頚椎症性神経根症がありますが、障害される部位と症状の広がりが異なります。

頚椎症性脊髄症

頚椎症性脊髄症では、脊柱管の中央を通る脊髄が圧迫されるため、両手や両足にしびれや動かしにくさが出やすく、手指の巧緻運動障害や歩行障害、排尿・排便障害などがみられます。進行すると麻痺が残る可能性があるため、手術のタイミングが重要になります。

頚椎症性神経根症

頚椎症性神経根症では、脊髄から枝分かれした神経の根元が圧迫されるため、症状は片側の腕に限局することが多く、首から肩、腕にかけての放散痛やしびれが主な症状となります。多くの場合、保存療法で自然に改善することもあります。両者は原因となる部位と症状の性質が異なるため、正確な診断と適切な治療方針の選択が重要です。

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