脊柱管狭窄症
spinal-stenosis
手足がしびれる、長く歩けなくなったと感じていませんか?
年のせいだとあきらめていませんか?原因がわかれば、楽になる方法があります。
脊柱管狭窄症(せきちゅうかん きょうさくしょう)は、背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が加齢によって狭くなり、神経が圧迫されることで足のしびれや痛み、間欠性跛行(少し歩くと足が痛くなり、休むとまた歩ける)を引き起こす疾患です。50代以降に多く、日本では推定患者数が数百万人に上るとされ、高齢化とともに増加しています。軽症では薬物療法やリハビリで改善しますが、日常生活に支障が出る場合は除圧術などの手術が有効です。当院では、脊椎外科専門医が保存療法から低侵襲の除圧術・固定術まで一貫して対応しています。
こんなお悩みありませんか?
一つでも当てはまったら、このページが役に立ちます。
- 手がしびれて、箸がうまく使えない。ボタンを留めるのも大変になってきた。
- 歩いていると足がしびれて、途中で休まないと歩けない。でも少し休むとまた歩ける。
- 足の裏がジンジン・ピリピリして、地面の感覚がわかりにくい。
- 自転車には乗れるのに、歩くとつらい。不思議に思っている。
- 最近、トイレが近くなった。おしっこの勢いが弱くなった気がする。
- 外出するのが怖くなり、家にこもりがちになってきた。
これらの症状には原因があり、改善できる可能性があります。まずは「どんな病気なのか」を知ることから始めましょう。
この病気って何?
ひとことで言うと、「背骨の中にある神経の通り道が狭くなって、神経が圧迫される病気」です。
背骨の中には、脊柱管(せきちゅうかん)という「トンネル」があります。このトンネルの中を、脳から手足につながる大切な神経が通っています。
年齢とともに、骨や靭帯(じんたい=骨と骨をつなぐバンド)が厚くなったり、クッション(椎間板)がふくらんだりして、このトンネルがだんだん狭くなります。狭くなったトンネルで神経が押しつぶされると、手足のしびれや痛みが出ます。これが脊柱管狭窄症です。
図解|背骨を輪切りにした断面図
図解|正常な状態と狭窄の比較
首と腰の2つのタイプがあります
脊柱管狭窄症には、狭くなる場所によって2つのタイプがあります。
首のタイプ(頚椎型):首の部分のトンネルが狭くなります。手のしびれや、手先の細かい動きがしにくくなるのが特徴です。ひどくなると、足のふらつきや歩きにくさも出てきます。
腰のタイプ(腰椎型):腰の部分のトンネルが狭くなります。足のしびれや痛み、「歩いていると足がつらくなるけど、休むとまた歩ける」という症状が特徴です。こちらのタイプのほうが多く見られます。
なぜ症状が出るの?
「トンネルの中で渋滞が起きている」イメージです
背骨の中のトンネル(脊柱管)には、脳から体じゅうに信号を送る大切な神経が通っています。このトンネルが狭くなると、神経が周りから押されてうまく信号を送れなくなります。電線が途中でつぶされると電気が通りにくくなるのと同じです。その結果、手足にしびれや痛みが出たり、力が入りにくくなったりします。
腰のタイプで「歩くとつらくなる」理由
立って歩くと、腰が少し反る姿勢になります。すると、もともと狭くなっているトンネルがさらにギュッと狭くなり、神経が強く押されます。前かがみになると、トンネルが少し広がるので、神経の圧迫がゆるみます。だから「休むと楽になる」「自転車は平気」なのです。
この「歩く→痛い→休む→また歩ける」のくり返しを、間欠跛行(かんけつ はこう)と呼びます。
図解|間欠跛行(かんけつ はこう)のしくみ
姿勢と脊柱管の広さについて:脊柱管の断面積は、腰椎の伸展(反り)により約15〜20%減少し、屈曲(前かがみ)により約10〜15%増大することが画像研究で示されています。血管性間欠跛行(動脈硬化による足の血流不足)との鑑別も重要で、血管性では前かがみで楽にならず、自転車でも症状が出る点が異なります。
どんな症状が出るの?
しびれや痛みだけではありません。狭くなる場所によって、出る症状が違います。
首のタイプ(頚椎型)の症状
手のしびれ・不器用さ:両手がジンジンしびれます。箸がうまく使えない、ボタンが留められない、小銭がつかめないなど、手先の細かい動きが苦手になります。字が下手になったと感じる方も多いです。
足のふらつき:首の神経は足にもつながっているため、足がもつれる、階段が怖い、つまずきやすいなどの症状が出ます。暗いところで特にふらつきやすくなります。
腰のタイプ(腰椎型)の症状
間欠跛行(かんけつ はこう):歩いているとだんだん足がしびれて痛くなり、途中で休まないと歩けなくなります。前かがみになったり座ったりすると楽になり、また歩けるようになります。ショッピングカートを押すと長く歩ける方が多いです。
足のしびれ:お尻から太もも、ふくらはぎ、足の裏までしびれや痛みが広がります。足の裏に何か貼りついている感じや、砂利の上を歩いているような感覚になる方もいます。
排尿の問題(重症のサイン):トイレが近くなった、おしっこの勢いが弱い、残尿感がある。これはすぐに受診が必要な重症のサインです。放っておくと回復が難しくなることがあります。
放っておくとどうなるの?
脊柱管狭窄症は、時間とともに少しずつ進行することが多い病気です。早い段階で気づいて対処することが、とても大切です。
初期:「なんとなくしびれる」
手足が少しピリピリする。長く歩くと足がだるい。この段階では「疲れているだけ」と見過ごされがちです。
進行:「日常生活に支障が出てくる」
歩ける距離がどんどん短くなる。箸が使いにくくなる。外出が減り、筋力が落ちて、さらに症状が悪くなる悪循環に入ります。
重度:「排尿障害・歩行困難」
おしっこが出にくくなったり、漏らしてしまうことがある。足に力が入らず歩けなくなる。この段階まで進むと、手術をしても完全に戻りにくいことがあります。
大切なこと:「排尿の異常」は緊急サインです。おしっこが出にくい、漏らしてしまう、残尿感がある。これらの症状が出たら、できるだけ早く脊椎の専門医を受診してください。神経のダメージが大きくなると、手術をしても完全には戻らないことがあります。早めの治療が、結果を大きく変えます。
セルフチェック
当てはまる項目をタップしてみてください。
※ これは簡易的なチェックです。正確な診断には専門医の診察が必要です。
病院ではどんな検査をするの?
「病院に行ったら何をされるんだろう?」と不安に思われる方も多いと思います。検査の流れをあらかじめ知っておくと、安心して受診できます。
Step 1:お話を聞かせてください(問診・診察)
「いつから」「どんなときに」つらいかをお聞きします。手の動きや歩き方、反射のチェックなども行います。「歩ける距離が短くなった」「箸が使いにくい」などの日常の変化は、大切な手がかりになります。
Step 2:写真を撮ります(画像検査)
レントゲンで背骨の状態を確認します。MRI(最も大切な検査)では、神経の通り道がどのくらい狭くなっているか、どこで神経が圧迫されているかを詳しく調べます。CTでは骨の形を立体的に詳しく調べます。当院ではMRIを完備しており、正確な評価が可能です。
脊髄造影(ミエログラフィー)は、造影剤を脊髄腔に注入してCTを撮影するもので、MRIだけでは判断が難しい場合や動態による狭窄の変化を評価する際に行います。
Step 3:あなたに合った治療プランをご提案
検査結果をもとに、どこが・どのくらい狭くなっているかを特定します。症状の重さや生活スタイルも考慮して、最も良い治療法をご相談しながら決めていきます。
どうやって治すの?
「すぐに手術」ではありません。まずはお薬やリハビリから始めます。それでも改善しない場合に、手術を検討します。
お薬・リハビリ・注射(保存療法)── まずはここから
お薬:痛みを抑える薬(消炎鎮痛薬)、神経の痛みを和らげる薬(プレガバリンなど)、血流を良くする薬など。
リハビリ:背骨を支える筋肉を鍛える体操。腰を反らさない姿勢の練習。ストレッチや筋力トレーニングで、トンネルにかかる負担を減らします。
装具(コルセットなど):腰を支えて安定させ、痛みを和らげます。
ブロック注射:痛みの原因となっている神経の近くに直接お薬を注入します。強い痛みに効果的で、診断の手がかりにもなります。
内視鏡・顕微鏡を使った手術(低侵襲手術)── 体への負担が少ない手術
小さなカメラ(内視鏡)や顕微鏡を使って、狭くなったトンネルを広げます。切る範囲が小さいので、体への負担が少なく、回復が早いのが特徴です。傷の大きさは1〜3cm程度。翌日から歩ける場合がほとんどです。
除圧術・除圧固定術 ── しっかり広げる手術
除圧術:トンネルの壁を削って、神経の通り道を広げます。神経を押しているものを取り除く手術です。
除圧固定術:トンネルを広げるだけでなく、背骨が不安定な場合にスクリューとロッドでしっかり固定します。背骨のずれ(すべり症)がある場合に必要になることがあります。
図解|除圧術のイメージ(手術前後の比較)
大切なのは「タイミング」です。長い間、神経が押され続けると、手術で圧迫を取り除いてもしびれが残ってしまうことがあります。特に排尿障害が出ている場合は、早めの手術が大切です。「もう少し様子を見よう」と思わず、気になったら早めにご相談ください。
最新の技術
脊椎外科の技術は目覚ましく進歩しています。より安全に、体への負担を少なく治療できるようになっています。
内視鏡手術(MEL / FEL)
直径7〜8mmの小さなカメラ(内視鏡)を入れて、モニターを見ながら手術します。傷の大きさはわずか1〜2cm。体への負担がとても少なく、多くの場合翌日から歩けるようになります。入院期間も短く済みます。FEL(全内視鏡下脊椎手術)はさらに小さな切開(約8mm)で行え、高齢者や合併症のある患者さんにも適応が広がっています。
顕微鏡手術
手術用の顕微鏡で術野を10〜20倍に拡大して手術します。細かい神経の周りを、ミリ単位の精度で安全に操作できます。大きな狭窄や複雑な症例にも対応でき、確実な除圧が可能です。
ナビゲーションシステム
カーナビのように、手術中にリアルタイムで器具の位置を3D画面で確認しながら手術します。スクリューの位置や角度を正確に決められるので、安全性が大幅に向上しています。術中神経モニタリングシステムとの組み合わせで、神経損傷のリスクをさらに低減しています。
よくあるご質問
症状の改善は十分に期待できます。保存療法(お薬やリハビリ)で良くなる方も多いです。手術を行えば、神経の圧迫を取り除いて症状を大きく改善できます。ただし、長期間放置した場合はしびれが一部残ることもありますので、早めの受診が大切です。
いいえ、全員に手術が必要なわけではありません。まずはお薬やリハビリ、ブロック注射で様子をみます。それでも症状が改善しない場合や、歩ける距離がどんどん短くなる場合、排尿障害がある場合に手術をご提案します。最近は体への負担が少ない手術が進歩しています。
大きく分けて3つあります。内視鏡手術は小さなカメラで行う体への負担が最も少ない手術で、傷は1〜2cmです。除圧術は顕微鏡などを使い神経の通り道を広げる手術です。除圧固定術は通り道を広げたうえでスクリューとロッドで背骨を固定する手術で、背骨が不安定な場合に行います。どの方法が最適かは、狭窄の場所や程度、全身の状態によって異なります。
年齢だけで判断することはありません。体力や全身の状態を総合的に評価して決めます。内視鏡手術は体への負担が少ないため、ご高齢の方にも行いやすい方法です。80歳以上でも手術を受けて元気に歩けるようになった方は多くいらっしゃいます。
手術の内容によりますが、内視鏡手術なら翌日から歩けることが多いです。1〜2週間で退院される方がほとんどです。除圧固定術の場合はもう少し時間がかかりますが、2〜3週間で退院、1〜3ヶ月で日常生活に戻られる方が多いです。
これは脊柱管狭窄症のとても大きな特徴です。自転車に乗ると前かがみの姿勢になり、神経のトンネルが広がるため楽になります。一方、歩くと体がまっすぐか少し反った姿勢になり、トンネルが狭くなるため症状が出ます。同じ理由で、ショッピングカートを押すと長く歩けるという方も多いです。
多くの場合、しびれは改善します。特に痛みの改善は早い傾向があります。ただし、長い期間神経が圧迫されていた場合は、手術後もしびれが一部残ることがあります。これは神経自体にダメージが蓄積しているためです。早めに手術を受けた方のほうが、しびれの改善率が高いことがわかっています。
腰のタイプでは、腰を反らす動作を避けましょう。杖やシルバーカーを使うと前かがみになれるので、長く歩けることが多いです。自転車や水中ウォーキングは安全に運動できるのでおすすめです。首のタイプでは、首を大きく反らす動作(上を向く、美容院でのシャンプー台など)に注意しましょう。転倒すると症状が急に悪化することがあるため、つまずきやすい場所を整理することも大切です。
まずはご相談ください
「年のせいだから仕方ない」とあきらめる必要はありません。原因がわかれば、楽になる方法が見つかるかもしれません。当院は全78床が脊椎専門、外来医師全員が脊椎専門医です。まずはお気軽にご相談ください。
お電話でのご相談
03-5856-7536受付時間:月〜金 9:00-17:00 / 土 9:00-12:00
安心して手術を受けていただくために、当院の手術の流れや設備についてご紹介します
参考文献・エビデンス
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