脊椎分離症・すべり症
spondylolysis-spondylolisthesis
脊椎分離症・すべり症とは
脊椎分離症・すべり症は、脊椎(背骨)の骨の一部が壊れたり、位置がずれたりすることで生じる病気です。大きく分けて、疲労骨折が原因の「脊椎分離症・分離すべり症」と、加齢によるすり減りや老化が原因の「変性すべり症」の2つのカテゴリが存在し、それぞれ起こりやすい年齢や症状の特徴が異なります。
疾患の定義と分類
脊椎分離症(Spondylolysis)
背骨の後ろ側の骨である椎弓(ついきゅう)のうち、「関節突起間部」と呼ばれる部分が疲労骨折を起こし、亀裂が入って分かれてしまった状態です。日本人の約6%(男性約8%、女性約4%)に見られ、第5腰椎(L5)に起こりやすいとされます。
脊椎分離すべり症(Isthmic Spondylolisthesis)
脊椎分離症により椎弓と椎体(背骨の本体)のつながりが断たれ、椎間板(背骨の骨と骨の間のクッション)の支える力が失われた結果、分離した椎体が前方へずれた状態です。
変性脊椎すべり症(Degenerative Spondylolisthesis)
骨の分離はありません。加齢に伴う椎間板や椎間関節(背骨の動きを支える関節)のすり減りや、ぐらつきが生じることで、椎骨(背骨をつくる骨)全体が前方へずれた状態です。40歳以上の女性に多く、第4腰椎(L4)に起こりやすいとされます。
原因と発症メカニズム
成長期のスポーツ活動
主な原因は成長期の過度なスポーツ活動による椎弓の疲労骨折です。10歳代の男性に多く、成長期のスポーツ選手の腰痛原因の30〜40%を占めます。遺伝的な素因(人種差や家族内で起こりやすい傾向)も関与するとされています。
加齢とホルモンバランス
椎間板や関節のすり減りが主な原因であり、特に女性ホルモンの分泌異常などの関与が指摘されています。
症状の特徴
共通して腰痛が見られますが、神経症状の出方に違いがあります。
痛みと診察でみられる所見
腰痛、背部の圧痛(押すと痛い)、叩打痛(叩くと痛い)が見られます。
Kemp徴候(ケンプ徴候): 身体を後ろに反らす・ひねる動きをさせた際に、腰から足にかけて痛みが走るのが特徴です。
神経症状の違い
分離症・分離すべり症: 分離した椎弓がその場に残るため、脊柱管(神経の通り道)はむしろ広がることが多く、排尿や排便のトラブルなどは、神経が圧迫されないため基本的に見られません。ただし、分離部で骨のとげができたり、神経の出口が狭くなったりすることで、神経の根元が圧迫され、足の痛みやしびれが出ることがあります。
変性すべり症: 椎骨全体がずれるため脊柱管が狭くなり(脊柱管狭窄症を合併)、馬尾神経(神経の束)が圧迫されます。これにより、間欠性跛行(歩くと足が痛くなり休むと治る)、会陰部のしびれ・灼熱感などの症状が生じます。
画像診断
X線検査(レントゲン)
分離症の確認には、斜め45度方向からの撮影が有用です。分離部が「首輪をしたテリア犬(テリアネックサイン)」のように見えるのが特徴的です。
側面像では椎体の前方へのずれを確認できます。
CT検査
骨の断層像により、初期の骨折線や、骨がくっつく状態を詳細に評価できます。病期分類(初期・進行期・終末期)の判定に用いられます。
MRI検査
T2強調像などで神経の圧迫状況を確認できるほか、STIR像(脂肪を抑えて炎症を見つけやすくする画像)を用いることで、CTでも診断が難しいごく初期の骨の中の炎症によるむくみをとらえることができ、早期発見に極めて有効です。
病期分類と治療方針
治療は保存療法が中心ですが、病期(進行度)によって対応が異なります。
保存療法
急性期(初期・進行期): 骨がくっつくことが期待できる時期です。MRIやCTで診断し、硬いコルセットやギプスで外から固定し、スポーツ活動の休止などの運動制限を行い、骨がくっつくことを目指します。早期であるほど治癒率が高いです。
慢性期(終末期): 分離部が固くなり、骨がくっつくことが期待できない時期です。治療の目的は痛みのコントロールになります。やわらかいコルセットの着用、薬物療法(痛み止め)、神経ブロック注射、ストレッチ(特に太ももの裏)、筋力トレーニングなどを行います。患者さまが運動制限を拒否する場合や、すでに終末期である場合は、あえて運動制限を行わず症状をコントロールしながら活動を続けることもあります。
手術療法
保存療法を行っても痛みが改善しない場合や、神経の障害が強い場合に行われます。分離部修復術(分離した骨をつなぐ)、椎体間固定術(ずれた骨を固定する)、除圧術(神経の圧迫をとる)などが選択されます。
3つの病態の違い
脊椎分離症
脊椎分離症は、背骨の後ろ側にある椎弓が分離している状態で、椎体自体のずれはありません。脊柱管に大きな変化はなく、神経が圧迫されることは通常ありません。
まれに神経の根元が刺激され、足の痛みやしびれが出ることがありますが、排尿や排便の障害などの馬尾症状はみられません。10代の男性に多く、第5腰椎(L5)に好発します。
脊椎分離すべり症
脊椎分離すべり症は、椎弓の分離に加えて、椎体が前方へずれた状態です。分離した椎弓が後方に残るため、脊柱管はむしろ広がることが多く、馬尾神経が圧迫されることは基本的にありません。
一方で、神経の根元が圧迫されることがあり、足の痛みやしびれが生じる場合があります。脊椎分離症と同様に、10代の男性に多く、第5腰椎(L5)に起こりやすいのが特徴です。
変性脊椎すべり症
変性脊椎すべり症は、骨の分離はなく、加齢による椎間板や関節のすり減りによって、椎体全体が前方へずれた状態です。椎骨全体がずれることで脊柱管が狭くなり、神経の束である馬尾神経や神経の根元が圧迫されます。その結果、歩くと足が痛くなり休むと楽になる間欠性跛行や、会陰部のしびれなどの馬尾症状が現れることがあります。40代以上の女性に多く、第4腰椎(L4)に好発します。
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