骨粗鬆症
osteoporosis
「最近、背が縮んだ気がする」「ちょっとしたことで骨折してしまった」
骨粗鬆症は「静かに進む病気」です。気づいたときには骨折していた、ということも珍しくありません。
骨粗鬆症は、骨の密度が低下して骨がもろくなり、わずかな衝撃でも骨折しやすくなる全身性の骨疾患です。日本では40歳以上の推定患者数は約1,590万人(女性約1,180万人・男性約410万人)と報告されており、特に閉経後の女性に多く見られます。脊椎の圧迫骨折や大腿骨骨折の主な原因であり、骨密度検査(DEXA法)による早期発見と薬物治療(ビスホスホネート製剤・デノスマブ・テリパラチドなど)で骨折リスクを大幅に減らせます。博豊会脊椎病院では、脊椎外科専門医が骨密度検査から薬物治療、骨折時の手術まで一貫して対応しています。
こんなお悩みありませんか?
一つでも当てはまったら、このページが役に立ちます。
- 以前より身長が縮んだ気がする。服の丈が合わなくなった。
- ちょっとしたことで骨折してしまった。手首をついただけなのに折れた。
- 背中や腰が痛い。原因がよくわからない痛みが続いている。
- 鏡を見ると背中が丸くなってきた気がする。
- 閉経を迎えてから、骨のことが心配になってきた。
- 家族に骨粗鬆症の人がいる。自分も同じようになるのではと不安。
骨粗鬆症は早期に見つけて適切に治療すれば、骨折を防ぐことができる病気です。まずは「どんな病気なのか」を知ることから始めましょう。
この病気って何?
「骨がスカスカになって、もろく折れやすくなる病気」です。
骨は一見、硬くて変化しないもののように思えますが、実は骨の中では毎日「古い骨を壊す」と「新しい骨を作る」という作業がくり返されています。年齢とともに壊すスピードが作るスピードを上回るようになると、骨の中がスカスカになり、ちょっとした力でも折れてしまうようになります。日本では40歳以上の推計患者数は約1,590万人とされており、その約74%が女性です。
「骨の貯金」という考え方
骨の強さ(骨密度)は、銀行の貯金に似ています。10代〜20代のころに一番たくさん「骨の貯金」がたまります。これをピークボーンマス(最大骨密度)と呼びます。30代以降は少しずつ「引き出し」が始まり、女性は閉経を迎えると、急激に骨の貯金が減ります。これは、骨を守る働きがある女性ホルモン(エストロゲン)が減るためです。
骨は常に「破骨細胞」が古い骨を溶かし(骨吸収)、「骨芽細胞」が新しい骨を作る(骨形成)ことで入れ替わっています。この一連の過程を骨リモデリングと呼びます。エストロゲンは破骨細胞の活動を抑える働きがあり、閉経でエストロゲンが急減すると、骨吸収が亢進し、閉経後5〜10年で骨密度が急速に低下します。
骨の内部は「スポンジ」のような構造をしています。正常な骨は目が詰まっていますが、骨粗鬆症では骨梁(こつりょう)が細くなったり途切れたりして、もろくなります。
女性は閉経後に骨密度が急激に下がります。20代までにしっかり「骨の貯金」をしておくことが大切です。男性もゆるやかに骨密度は下がるため、70歳以降は注意が必要です。
骨粗鬆症は早期に見つけて適切に治療すれば、骨折を防ぐことができます。「骨の貯金」が少ない方や「引き出し」が多い方ほど注意が必要です。
なぜ起こるの?
骨粗鬆症にはいくつかの原因があります。当てはまるものが多いほど、注意が必要です。
1. 閉経(女性ホルモンの減少)
最も大きな原因です。女性ホルモン(エストロゲン)には骨を守る働きがあります。閉経でこのホルモンが急に減ると、骨がどんどんもろくなります。閉経が早かった方は、特に注意が必要です。
2. 加齢
年齢とともに、新しい骨を作る力が弱くなります。70歳以上になると、男性でも骨粗鬆症になる方が増えてきます。また、腸でカルシウムを吸収する力や、ビタミンDを作る力も落ちてきます。
3. カルシウム・ビタミンD不足
骨の材料であるカルシウムが足りないと、骨は弱くなります。また、ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける大切な栄養素です。日光を浴びることでも体内で作られますが、外出が少ない方は不足しがちです。
4. 運動不足
骨は「使われるほど強くなる」という性質があります。動かないと骨はどんどん弱くなります。散歩などの適度な運動は、骨を守る大切な習慣です。
5. ステロイド薬の長期使用
喘息やリウマチなどでステロイド薬を長期間使っている方は、骨粗鬆症になりやすいことがわかっています。これを「ステロイド性骨粗鬆症」と呼び、お薬による予防が特に大切です。
その他にも、やせ型の体格、過度の飲酒、喫煙、関節リウマチ、糖尿病なども骨粗鬆症のリスクを高めます。また、家族(特にお母さん)に骨粗鬆症や骨折の経験がある方は、遺伝的にリスクが高いことがあります。
骨粗鬆症と背骨の関係
骨粗鬆症で最も怖いのは「圧迫骨折」です。特に背骨(椎体)は体の重みを常に受けているため、骨粗鬆症の影響をとても受けやすい場所です。もろくなった背骨が体の重みに耐えられなくなると、つぶれてしまいます。これが圧迫骨折です。くしゃみをしたり、重いものを持ち上げたり、ちょっと尻もちをついたりしただけで、骨が折れてしまうことがあります。
もろくなった背骨(椎体)が体の重みでつぶれる。これが圧迫骨折です。特に前方がつぶれて「くさび形」になることが多いです。
圧迫骨折が引き起こす「連鎖」
圧迫骨折は、1か所で終わらないことが多いのが怖いところです。1つの骨がつぶれると、その上下の骨に余計な力がかかります。すると次の骨もつぶれ、さらに次の骨も…という「ドミノ倒し」のような連鎖が起きることがあります。その結果、背中がどんどん丸くなり、最終的には「脊柱変形」という状態になることもあります。
骨粗鬆症を放っておくと、圧迫骨折が連鎖し、背中が丸くなる「脊柱変形」につながります。
圧迫骨折を一度起こした方は、翌年に再び骨折するリスクが約5倍になります。これを「骨折の連鎖(ドミノ骨折)」と呼びます。最初の骨折を起こさないこと、起こしてしまったら次を防ぐことが非常に大切です。
どんな症状があるの?
骨粗鬆症の一番怖いところは、自覚症状がほとんどないことです。骨が弱くなっていることに気づかず、骨折して初めてわかる方がとても多いのです。
自覚症状がない(サイレントディジーズ)
骨密度が下がっても、痛みや違和感はありません。そのため「自分は大丈夫」と思っている方がほとんどです。定期的な検査でしか見つけられないため、「静かな病気」と呼ばれています。
身長が縮んだ
若いころより2cm以上縮んだ方は要注意です。背骨が少しずつつぶれている可能性があります。年に一度は身長を測る習慣をつけましょう。
背中が丸くなってきた
背骨の圧迫骨折が複数起こると、背中が丸くなります。壁に背中をつけて立ったとき、後頭部が壁につかない場合は、背骨が曲がっているサインかもしれません。
腰や背中の痛み
圧迫骨折が起きると、急に腰や背中が痛くなることがあります。寝返りを打つときや起き上がるときに強い痛みが出ます。ただし、痛みが弱い場合は「筋肉痛かな?」と見過ごされることもあります。壁にかかと・お尻・背中をつけて立ったとき、後頭部が壁につかない場合は、背骨が前に曲がっている可能性があります。ぜひ試してみてください。
かんたんリスクチェック
当てはまる項目をタップしてみてください。
※ このチェックリストは医学的な診断に代わるものではありません。気になる項目がある方は、お早めに骨密度検査をお受けください。
病院ではどんな検査をするの?
「骨の検査って痛いのかな?」と心配される方もいらっしゃいますが、痛みのない検査がほとんどです。安心してお越しください。
骨密度検査(DEXA法)
最も正確な骨密度の検査法です。ベッドに横になるだけで、腰と太もものつけ根の骨密度を測ります。レントゲンと同じようなX線を使いますが、被ばく量は非常に少なく、検査時間も10〜15分程度です。痛みは全くありません。
血液検査・尿検査
血液や尿を調べることで、今、骨が壊されるスピードが速いのかがわかります。これを「骨代謝マーカー」と呼びます。治療の効果を確認するためにも使われます。また、ビタミンDやカルシウムの状態も確認できます。
骨折リスク評価(FRAX)
年齢、性別、体重、骨折歴、家族歴などをもとに、今後10年間で骨折する確率を計算するツールです。WHO(世界保健機関)が開発した信頼性の高い評価法で、治療を始めるかどうかの判断に役立ちます。
骨密度の見方
骨密度検査の結果は、YAM(若年成人平均値)という指標で表されます。YAM 80%以上が正常、70〜80%が骨量減少(予備軍)、70%未満が骨粗鬆症とされます。ただし、すでに骨折がある場合は、YAMが80%以上でも骨粗鬆症と診断されることがあります。
女性は閉経を迎えたら、男性は70歳を過ぎたら、一度は骨密度検査を受けることをおすすめします。骨粗鬆症と診断された方や治療中の方は、半年〜1年に1回の定期検査が大切です。
どうやって治すの?予防するの?
骨粗鬆症の治療・予防は「お薬」「運動」「食事」の3本柱です。どれか一つだけでは不十分。3つをバランスよく続けることが大切です。
お薬・運動・食事の3つをバランスよく組み合わせることで、骨を守り、骨折を防ぎます。どれか一つだけでは効果が十分ではありません。
お薬の治療
骨粗鬆症のお薬は大きく分けて2つのタイプがあります。骨が壊れるのを抑えるお薬(ビスホスホネート、デノスマブなど):古い骨を壊す「破骨細胞」の働きを抑えて、骨が減るのを防ぎます。新しい骨を作るお薬(テリパラチドなど):新しい骨を作る「骨芽細胞」の働きを活発にして、骨を増やします。両方の働きを持つお薬(ロモソズマブなど):骨が壊されるのを抑えながら、同時に新しい骨を作ることもできる新しいお薬です。どのお薬が合うかは、骨密度や骨折の状態、お体の状況によって異なります。
運動療法
骨は「重力がかかるほど強くなる」という性質があります。1日30分のウォーキング、背筋を伸ばす体操、片足立ち(太ももの骨が強くなる)、ゆっくりスクワット(椅子を使ってもOK)などが効果的です。筋力やバランス力がつけば転びにくくなり、骨折のリスクも下がります。
食事療法
カルシウム(1日700〜800mg目標):牛乳・ヨーグルト・チーズ・小魚・豆腐・小松菜など。牛乳コップ1杯で約220mgです。ビタミンD:カルシウムの吸収を助けます。鮭・しらす・きのこ類に多く含まれ、日光を15〜30分浴びることでも体内で作られます。ビタミンK:骨にカルシウムを定着させます。納豆・ほうれん草・ブロッコリーなどに多く含まれます。たんぱく質:骨の土台となるコラーゲンの材料です。お肉・お魚・卵・大豆製品をバランスよく。
転倒予防も大切です
家の中のちょっとした段差にスロープをつける、滑りにくいスリッパに替える、暗い廊下にセンサーライトをつける、お風呂に手すりをつけるなど、小さな工夫が骨折を防ぐ大きな一歩になります。骨粗鬆症のお薬は、効果を実感しにくいため途中でやめてしまう方が多いのが問題です。お薬をやめると骨折リスクが再び上がります。医師の指示に従って、根気よく続けてください。
最新の治療薬
近年、新しいお薬が次々と登場し、骨折リスクを大きく減らせるようになっています。
テリパラチド(副甲状腺ホルモン薬)
新しい骨を作る力を強力に刺激するお薬です。毎日または週1回の注射で投与します(自己注射も可能です)。骨密度を大きく上げる効果があり、すでに骨折がある重症の方に特に有効です。使用期間は最大2年間と決められています。VERO試験では、ビスホスホネートと比較して椎体骨折リスクを56%減少させることが確認されています。
デノスマブ(抗RANKL抗体)
骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きをピンポイントで抑えるお薬です。半年に1回の注射なので、飲み忘れの心配がありません。骨密度の改善効果が高く、長期間使い続けることができます。FREEDOM Extension試験の10年追跡データでは、長期投与により椎体骨折リスクが68%減少しています。
ロモソズマブ(抗スクレロスチン抗体)
骨を作る力を高めながら、同時に骨が壊されるのも抑えるという画期的な「二刀流」のお薬です。月1回の注射で、12ヶ月間使用します。特に骨折リスクが高い方に使われます。投与終了後は、別のお薬に切り替えて効果を維持します。
お薬の「リレー治療」という考え方
最近の骨粗鬆症治療では、お薬を順番に使い分ける「リレー治療」が注目されています。例えば、まず骨を作るお薬で骨密度を上げてから、骨が壊れるのを抑えるお薬に切り替えることで、より効果的に骨を強く保つことができます。どのお薬をどの順番で使うかは、患者さんの状態に合わせて医師が判断します。
よくあるご質問
完全に元の骨密度に戻すのは難しいですが、お薬や運動・食事療法で骨密度を改善し、骨折を防ぐことは十分に可能です。大切なのは、治療を途中でやめないことです。
DEXA検査はベッドに横になるだけで、痛みは全くありません。検査時間も10〜15分程度です。着替える必要もない場合がほとんどです。安心してお越しください。
カルシウムだけでは不十分です。ビタミンDがなければカルシウムはうまく吸収されません。また、運動で骨に刺激を与えることも必要です。できれば食事からバランスよく摂ることをおすすめしますが、食事で足りない分はサプリメントで補うのもよいでしょう。
はい、男性もなります。女性に比べると少ないですが、70歳以上の男性の約5人に1人が骨粗鬆症です。特に、ステロイド薬を使っている方、過度の飲酒をしている方、喫煙している方はリスクが高くなります。
まずは安静にして痛みを和らげます。コルセットで背骨を固定することもあります。多くの場合は2〜3ヶ月で痛みが落ち着きますが、治りが悪い場合やつぶれがひどい場合は、セメントを注入する手術(椎体形成術)や金属で固定する手術が検討されることもあります。何より大切なのは、次の骨折を防ぐ治療を始めることです。
お薬によって異なりますが、ビスホスホネートでは飲み方の注意(起床後すぐ、水で服用、30分は横にならない)があります。デノスマブでは低カルシウム血症に注意が必要です。医師がお体の状態に合わせて最適なお薬を選びますので、気になることがあれば遠慮なくご相談ください。
女性は閉経を迎えたら、男性は70歳を過ぎたら、一度は骨密度検査を受けることをおすすめします。家族に骨粗鬆症の方がいる場合や、ステロイドを使っている方は、もっと早くから検査を受けた方がよいでしょう。骨粗鬆症は早く見つけるほど、治療の効果が高くなります。
大いに関係があります。骨粗鬆症で背骨がつぶれる(圧迫骨折)と、背中が丸くなります。これが複数起きると「脊柱変形」という状態になり、腰痛や歩行困難の原因になります。当院は脊椎の専門病院として、骨粗鬆症の治療と背骨の治療を一体的に行うことができます。
まずはご相談ください
「骨粗鬆症かもしれない」「骨折が心配」そう感じたら、早めの相談が大切です。骨密度検査は痛みもなく、短時間で終わります。当院は全78床が脊椎専門、外来医師全員が脊椎専門医です。まずはお気軽にご相談ください。
お電話でのご相談
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安心して手術を受けていただくために、当院の手術の流れや設備についてご紹介します
参考文献・エビデンス
- 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」ライフサイエンス出版, 2015.
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